思い出せない記憶と考える力

思い出せない記憶と考える力

忙しさとストレスの中で薄れていく情景

普段の日常の中で、「何をしようとしてたんだっけ?」と一瞬、思い出せなくなることはありませんか?あるいは、つい最近の会話の内容がふっと記憶から抜け落ちたり、戻したばかりの本のタイトルがなんだったかさえ思い出せなかったり。

もしこうした出来事が一時的なものであれば、きっとさほど気にすることはないでしょう。でも、日常的に当たり前だったはずの記憶力や判断力が、少しずつ霧がかかるように薄れていく感覚に気づいたら、不安な気持ちが胸をよぎるかもしれません。

認知機能低下について、特に印象に残っているのは、実際にその変化を初めて感じた方々がその瞬間に抱えた戸惑いや、もがくような気持ちを語ってくれた言葉です。

例えば、長年当たり前だった自宅のカギの場所が突然思い出せなくなったり、大切な人との約束がスッと記憶から抜け落ちるような感覚だったり。こうした話を聞いていると、普段積み重ねてきた「当たり前」が、見えない力で崩れていくような光景が頭に浮かんできました。

「認知機能」という言葉は、私たちの生活のあらゆる基盤を支えているものです。でも、それが目に見えないからこそ、変化に気づくのって意外と難しい。ふとした瞬間に、自分の記憶や思考がこれまでの自分とは少し違うかも…?なんてことに気づく時が誰にでもあるかもしれません。

私が、認知力に興味を持ったのは、私たちの日常に潜むそんな「見えない変化」について、もう少し詳しく知りたいと思ったからです。とはいえ、「認知機能低下」って具体的に何を指しているのか、わかりにくいなと思う人も多いかもしれません。

そこで、認知力とは何か。認知力が低下する認知機能低下について、その原因や背景。日常生活の中でどんなヒントが得られるのか、考えてみたいと思います。

考える力とその本質

「認知機能低下」という言葉を聞くと、多くの人が真っ先に「記憶力が落ちること」を思い浮かべるかもしれません。また、加齢と結びついているイメージが強い方もいるでしょう。

でも実際には、それだけにとどまらない幅広い意味を持っています。記憶力だけでなく、思考力、判断力、集中力、さらには意思決定能力なども含まれます。考える力が衰える感覚。それには年齢だけでなく、日々のストレスや生活習慣、場合によっては病気が関わっているもあります。

ですので、認知機能低下とは何か。を理解することは特定の年代だけの問題ではなく、どんな世代の人にも関わる話になります。認知力を理解することで、その対策や改善ができ、毎日の生活をもっと充実させることができるかもしれません。

なんとなく頭がモヤモヤする、考えがまとまらない。そんな感覚が少しずつ生活の質に影響を与えていることに気づいたら、それは認知機能低下のサインかもしれません。では、具体的にはどうすれば改善していくことができるのでしょうか?

認知機能低下とは何か

忙しい日常の中で、「あれ、鍵をどこに置いたっけ?」と探し回ることが増えたり、人の名前が咄嗟に出てこなくなったりすると、少し焦りのようなものを感じることがります。認知機能低下は、多くの人が経験する小さな変化から始まり、それが積み重なることで日常生活に影響を及ぼす可能性があります。

記憶力の低下

記憶が曖昧になることは、認知機能低下の一つの兆候です。たとえば、約束の時間を忘れてしまったり、よく行く場所への道順を思い出せなくなったり。これは単なる「うっかりミス」として見過ごされがちですが、頻度が増えると不安を感じる人も多いようです。

私が知っている人の中にも、仕事で重要な書類の提出期限を忘れてしまい、上司に厳しく注意されたことから自己嫌悪に陥ったというケースがありました。

「なんでこんな簡単なことを忘れてしまったのか」と。その時の彼女の言葉には、焦燥感と自分への怒りがありました。このようなストレスも、認知機能低下をさらに悪化させる可能性があります。

判断力や集中力の減少

認知機能低下のもう一つの側面は、集中力が続かなかったり、判断を下すのに時間がかかるようになることです。例えば、スーパーで買い物をする際に、本当に必要なものを選ぶのにかなりの時間がかかってしまう。何が良いのか、何が合っているのか、頭の中で整理がつかず、余計なものをカゴに入れてしまう、といったことです。

こうした小さなズレの積み重ねが、仕事や家庭でも問題を引き起こすことがあります。特に、迅速な決断が求められる場面では、一瞬の迷いが後に響くことも。これにより、その人自身が「自分は役に立たない」と感じ始めることがあり、自己評価の低下にもつながることがあります。

並行作業の実行が困難になる

日々の生活では、複数のタスクを同時に処理する能力が求められる場面が多いと思います。認知機能が低下すると、一度にいくつものことをこなすことが難しく感じられるようになります。

例えば、仕事中にメールの返信をしつつ、会議資料の作成に集中しなければならない場合は、思考が停滞し、作業が中途半端に終わってしまうことがあります。

それが何度も続くと、仕事の効率が落ち、周囲からの目線も厳しくなることが考えられます。その結果、「何をやってもダメだ」という気持ちが心に影を落とすようになります。

認知症やアルツハイマー病との違い

ここまで読んだ方は、「これって認知症のこと?」と思うかもしれません。でも、認知機能低下と認知症やアルツハイマー病は同じではありません。

認知機能低下は、文字通り「認知機能が下がる状態」であり、加齢やストレス、睡眠不足など、さまざまな原因で誰でも一時的に経験することがあります。一方、認知症やアルツハイマー病は、病理学的な変化が原因となり、ゆっくり進行する病気です。

ちょっとした物忘れがすぐに病気につながるわけではない、と覚えておくことは大切なポイントだと思います。

心的影響と周囲の反応

認知機能の低下がもたらすもう一つの大きな課題は心理的な影響です。仕事の場面での失敗や、家庭内でのちょっとした忘れ物が続くと、焦りや不安、自己嫌悪の感情が押し寄せてくることがあります。

他人に迷惑をかけることへの心理的な負担が大きくなる傾向があり、「また何かを忘れてしまったから注意されるのではないか」「みんなに迷惑をかけてしまった」と感じることで、自信を失い周囲から孤立してしまう場合もあります。

周りの言葉が、心にもたらす影響は計り知れません。認知機能低下は誰にでも起こり得る問題ですが、それを理解し、自分自身や他人に対する優しさを持つことが大切になります。

加齢による影響

認知機能の低下は年を取ると避けられないものだと言われています。例えば、年齢とともに記憶力が落ちたり、情報を処理するスピードが遅くなったりすることを感じる人も多いと思います。でも、それを単純に老化の一部と片付けるのは少し早いかもしれません。

脳は年齢に関係なく機能を維持しようと頑張ってくれます。ただ、神経細胞の数が減ったり、神経細胞同士をつなぐシナプスが弱くなったりするのは避けられないそうです。

特に70代や80代になると、「ただの物忘れだよ」と片付けられがちな日常的なミスが、実は認知機能低下の始まりだったりすることもあります。私の祖母も70代のころ、「最近、物忘れがひどくてね」と冗談っぽく話していましたが、今振り返ると、それが認知機能低下のサインだったんだなと感じています。

ストレスと生活習慣

ストレスが積み重なると、実は脳に想像以上の負担をかけてしまうことがあります。「ストレスは万病のもと」ロいう言葉を聞いたことがある人も多いと思いますが、本当に侮れないものなんです。ストレスホルモンのコルチゾールが過剰に分泌されると、記憶をつかさどる「海馬」に大きなダメージを与えることが分かっています。

試験中の緊張で、覚えていたはずの答えが頭から飛んでしまった。という経験がありませんか?その瞬間に脳内のコルチゾールがパニックを引き起こしているんです。ただの緊張って片付けるのは簡単ですが、これはストレスが脳に影響を与えている一例として知っておくべきだと思いました。

疾患や薬の影響

認知機能への影響として見逃せないのが疾患や薬剤の副作用です。特に糖尿病や高血圧といった慢性疾患は、それ自体が認知機能低下のリスクを押し上げると言われています。血糖値が常に高い状態や血圧が安定しない状態は、脳に必要な酸素や栄養が送られにくくなる要因となり、結果として認知機能にも悪影響を及ぼします。

一般的な薬剤の中にも認知機能に影響を与えるものが少なくありません。睡眠薬や抗不安薬がその例で、これらは短期間であれば有効ですが、長期的に使用すると記憶力や注意力に影響を及ぼすことがあります。

一時期、知人が睡眠薬を普通の風邪薬のように気軽に飲んでいると、日中に集中力がなくなり物忘れがひどくなってきたそうです。睡眠は重要ですが、薬の助けを借りず自然な睡眠リズムを整えることも大切です。

ブレインフォグと認知機能低下の違い

最近よく耳にする「ブレインフォグ」という言葉も、実は認知機能低下と似た症状を表しています。しかし、両者には明確な違いがあります。

ブレインフォグは、頭がぼんやりしたり思考力が鈍ったりする状態を指し、主にストレスや睡眠不足などの要因で引き起こされます。一方、認知機能低下は、記憶力や学習能力の低下、言葉の理解や表現に問題があるなど、機能性に関わる症状を表します。

マインドフルネスやリラックス

私自身も、仕事やの忙しさによりストレスが溜まり、ブレインフォグを感じることがありました。その時は、マインドフルネスやリラックスする音楽を聴く。

体に必要な ブレインフード を取り入れるなどの方法でストレスを解消し、睡眠にも気を配ることで改善しました。また、運動することと合わせて、 サウナでブレインフォグを解消 しました。

認知機能低下はより深刻な問題であり、私の周りでも認知症と診断された方がいます。その経験から、自分の脳を大切にすることの重要性を改めて実感しました。

毎日の生活で、脳を活性化させるためにも適度な運動や栄養バランスの良い食事、そしてストレスを溜めないような心がけが必要だと思います。また、ルイ・セローが見た 認知症 家族の苦悩と愛 というドキュメンタリーもおすすめです。

思い出せない記憶と考える力

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